住宅と健康 ~温熱環境
「家の作りやうは、夏をむねとすべし。
冬はいかなる所にも住まる。
暑き比わろき住まいは耐え難きことなり。」
兼好法師の「徒然草」の一節です。
家のつくり方は、夏を考えてつくりなさい。
冬の寒いのは我慢できるが、暑いのは我慢できない。
と、おっしゃっています。
兼好法師の時代にはなかったエアコンが一般的になった現代でも、機械に頼らない生活の仕方や建築の工夫は私も賛成です。
夏は樹木や庇などの日射遮蔽の工夫をする。
地域の風を採りこみ、室内を風が抜けるようにする。
気持が良いですね。
でも冬はどうでしょうか。
厚着をして、コタツに入って、トイレも我慢して寒い冬を耐える。
「我慢」は美徳ではありますが、過度な我慢は実は健康に悪影響があるのです。
でも「寒さ」は人によって感じ方が違いますよね。
WHO(世界保健機関)が2018年11月に「住宅と健康ガイドライン」を発表しました。
冬の室内温度を18℃以上とすることを勧告しています。
2023年1月17日にはNHKクローズアップ現代でも放送されました。
『実は危ない!ニッポンの”寒すぎる”住まい』という回です。
みなさん、ご自宅のリビングの室温はご存知でしょうか?
ぜひ一度測ってみてください。
在宅中に18℃を超えている住宅は1割程度といわれています。
次の図1は冬のリビングの平均室温(在宅中)です。
北海道が暖かいのは、寒い地域なので昔から断熱工事をしっかりとされてきた結果です。
逆に温暖地は断熱工事に力を入れていないため、在宅時でも室温が低い傾向にあります。
下の図2は、夏に比べて冬の死亡者数の差を比率にしたものです。
割合が大きいほど、冬の死亡者数が多いということになります。
上の2つの図を見比べてみると、冬の室温が高い地域は死亡増加率が低いことが分かります。
つまり、室温を高くすることで、冬の死亡リスクを減らすことができるのです。
国土交通省が中心となり、全国約2千軒・約4千人を対象に「住まいと健康」の関係を2014年から調査を行った結果が発表されてきています。
・生活環境鋲の発症と悪化
・睡眠の質の低下
・転倒骨折など要介護状態になるリスクの増加
は、すべて住環境、特に家の中の寒さと密接に関係していることが科学的に解明されています。
断熱改修で血圧が下がることも実証されています。
次の図3は、起床時の室温と最高血圧の関係を示しています。
室温が10℃低下すると、80歳男性・女性とも血圧が10mmHg上昇。
30歳男性3.8mmHg上昇、30歳女性5.3mmHg上昇です。
では、暖かい家に暮らすと、どのような影響があるのでしょうか。
次の図4は588軒・975人の断熱改修前後の血圧の変化です。
この図には表れていませんが、高齢者や治療中の方ほど血圧は低下しています。
他にもお伝えしたい効果がたくさんありますが長くなってしまうので、項目だけ記載します。
・糖尿病、脂質異常症の改善
・認知症予防(脳の老化防止)
・睡眠の質改善
・夜間頻尿改善
・身体活動量の増加
・健康寿命の延長
などなど良いことづくめなんです。
これから、新築される方は神奈川でしたら、断熱等級6以上を目安に。
中古住宅を購入される方は、可能であれば、入居前に断熱改修工事をして新築に近い断熱性能に。
入居中の方は、窓の改修や天井裏、床下の断熱改修や気流止めの設置など、住みながら、負担が少なくできる工事をして、快適で省エネで健康的に暮らせる住宅にしていただきたいです。
国の補助金も活用できますので、気軽にご相談ください。
国土交通省・経済産業省・環境省の住宅省エネ2024キャンペーンのHPです
不明点もお気軽にお問合せください。
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