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すまい環境設計株式会社

耐久性能 ~木材保護と家族の健康

省エネ性能は日々の暮らしを快適に健康的にするために必要な性能です。

断熱性能を高めることで快適な温熱環境をつくるとともに、気密性能を高めることで室内の空気を計画的に換気しホルムアルデヒドなどの有害物質やに私たちが呼吸してでる二酸化炭素などを屋外に排出し、屋外の新鮮な空気を取り込めるようにします。

耐震性能を高めることで地震や台風などから、家族の生命を守り、地震被害後も住み続けられる住宅になります。

断熱性能、気密性能、耐震性能と併せて考えていきたいのが『耐久性能』です。

かなり地味なので、後回しにされがちですが、一番大切な性能のひとつです。

住宅の設計思想によっても違ってきますが、快適で安心して「長く」住める(使える)家にするために、劣化を防ぎ、維持管理・更新をしやすい構造にすることが大切です。


今回は100年使用できる住宅をつくるために木造住宅の劣化を防ぐという観点で書いてみます。

従来通り30年もてば良い!という方は読み飛ばしてください。


木造住宅の構造躯体はもちろん「木」でできています。

以前のブログで書きましたが、木材が劣化する原因は大きく3つです。

①地震や台風などの外力による変形

②直射日光や風雨などによる劣化

③菌類(キノコ)による腐朽、虫(シロアリ)による食害

です。

①②の対策は以前のブログを参照いただけると嬉しいです。



今回は③の対策として、木材の防腐防蟻処理(シロアリ対策)について詳しく書きます。


防腐防蟻の基準について、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の土台の仕様は以下のようにあります。

土台部分に耐腐・耐蟻性能のある木材を使用する

1)ひのき、ひば等の樹種を使用する

2)防腐・防蟻処理剤を使用する

  ※構造用製剤の日本農林規格(JAS)に規定する保存処理の性能区分K3以上

杉の丸太

木材には年輪の中心側の「心材」と外側の「辺材」があります。

丸太の内側の色の濃い部分が「心材(赤身)」、外側の白い部分が「辺材(白太)」といいます。

中心に近い心材は身が詰まっていて耐腐・耐蟻性能が高いのに対し、辺材の耐腐・耐蟻性能は低いです。

原木からの木取り方法

土台・柱の角材は中丸太より製材します。

芯持ち材といって芯を含んでいますが、周辺には辺材があります。

集成材はラミナという厚さ30mmの板材(心材・辺材混合)を貼り合わせてつくります。

つまり、1)の樹種での防腐防蟻は現実的とは言えないのです。

そうなると、2)の防腐・防蟻処理剤で木材を処理するようになります。

薬剤処理には工場で加圧注入する方法と現場で塗布する方法があります。

一般的に使用されている農薬系の薬剤は神経毒ですので、室内に入った場合、健康被害が起きることがあります。

特に赤ちゃんやペット、妊婦さんに影響がでやすいと言われています。

床断熱をされている場合は床下は外気となり、室内との空気の行き来は少ないので、心配は少ないです。

基礎で断熱する場合は、床下も室内空間になりますので、絶対に床下に薬剤処理してはいけません。

また、農薬系薬剤の効果は最長で5年ですので、定期的なメンテナンス(再処理)が必要になります。

しかし、新築時は地盤面から1mまでの土台・柱・間柱・耐力壁材の処理ができます。

5年毎の定期メンテナンスの時はほとんどの部分が仕上げ材や断熱材に覆われており、再処理できるのは床下に露出している土台・大引き材の下面くらいです。

ほとんどの部分は再処理できないことになります。

1世代30年保てれば良いという住宅なら、大地震に遭遇する確率も低いので、耐久性に神経質になる必要もないと思います。

が、長期優良住宅となると、100年先まで考える必要があります。


では、どうすれば良いのでしょうか?

私たちは防腐防蟻は『ホウ酸』が最適だと考えています。

理由は以下の2点です

①人体に無害であること

 農薬系は神経毒なので、シロアリにも人間にも有害です。

 一方ホウ酸は人間など哺乳類には無害ですが、シロアリには有害です。

 ホウ酸の毒性は食塩と同程度で、万が一摂取しても腎臓で処理され体外に排出されます。

②効果が長持ちすること

 ホウ酸塩は無機物であり、有効成分が揮発・分解しないので効果は半永久的です。

 定期点検は必要ですが、基本的に再処理は不要なのです。

 初期費用は、農薬系に比較すると高いですが、5年毎の再処理が不要になりますので結果的に安くなります。

しかし、デメリットもあります。

施工管理が大変なのです。

ホウ酸処理は現場で行います。

そして、水に溶けるので、降雨対策が重要です。

つまり工程管理が大変なのです。

土台・大引きを搬入し、現場でホウ酸を塗布、その後土台を敷いて、一階の床合板まで張って、厚手のブルーシートで雨水に濡れないように養生します。

そして上棟して、屋根の下地ができて、外壁の間柱を建てたら、地盤から1mまでの外周木部にホウ酸を塗布します。

そして、降雨が予想されるときは、雨養生します。

ここがポイントです。

文字で書くと簡単なのですが、実はけっこう大変で、現場監督と大工さん、防腐処理業者さんが密に連絡を取って作業を進めます。

土台材をホウ酸塗布後にシートで雨養生
1階床合板施工後にシートで雨養生
上棟後の状況、間柱取付後にホウ酸を塗布します

大変で2日くらい余計に時間がかかるのですが、これから100年使えるようにきっちり工事します。

30年後も使える住宅なら資産になります。

住み替えのときには、建物にも価値が認められるので売却もしやすくなります。

自分の世代だけでなく、子供、孫の代まで使える資産になる住宅をつくりませんか?

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